そろそろ海外旅行に行けないのか?2020年初に始まったCOV-19騒ぎ。早くも2年近く経とうとしています。理屈では今でも海外旅行に行くことは行けるのですが、現在の制度では帰国後2週間の自宅での隔離が必要で、かつ帰国時には空港から自宅まで公共交通機関を使わずに帰宅する必要があり、これでは休暇を使って海外旅行というわけにはいきません。ところが、最近のニュースを見ていますと、そろそろ解禁間近を臭わせるニュースが出てきていますので、そのあたりを整理してご紹介しようと思います。
海外旅行解禁への道筋
① 国連の場で国際航空の回復に関する協議が進んだ
10月12日から22日の間、ハイレベルのICAO会議(注)が開催され、各国が協力して取り組む閣僚宣言「世界的大流行を超えた航空の回復、回復力、持続可能性のための1つのビジョン」を全会一致で採択しました。要点を整理すると、「旅行の促進を目的として、① 検疫要件を緩和または免除するためにワクチン接種証明書などのデジタル化を進めるが、② ワクチン接種を必ずしも旅行の前提条件としないこと。また、③ 現時点では様々なルールが存在するデジタル証明について各国で相互運用できるようにする。」ことにしています。
(注) ICAO:International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関) ~ 国際民間航空条約に基づき、国際民間航空に関する基準を開発し制定する国連の下部機構)
② 日本国内においても入国検疫の基準が変化している
日本政府は11月9日現在、国籍を問わず外国から日本に入国しようとする者の上陸を原則拒否しています。特段の事情があって上陸しようとする際にはすべての国籍の者に、
(1) 出国前72時間以内の検査証明書の提出
(2) 入国時の検査
(3) 国内における14日間の公共交通機関の不使用
(4) 自宅や宿泊施設での他者との接触のない14日間の待機
の4点を求めています。良し悪しは別として、この制度が観光を含む海外旅行を阻む直接的な要因となっています。
日本政府は11月8日付で海外からの入国者に対する上述の入国制限を緩和しました。その内容は、ビジネス目的での日本への入国はワクチン接種や受け入れ先の申請などを条件に、入国後の待機を最短3日間と短縮することとしました。この制度には留学生や技能実習生の入国も条件付きで認めることにしていますが、観光客については今回の緩和の対象外としました。政府は新型コロナの感染状況を見ながら、入国の対象を段階的に広げるかを検討することとしています。
これを受けて、経団連は同日、海外でビジネス往来が再開している現状を踏まえて、日本だけが国際的な流れに取り残されることのないよう、ワクチン接種者の入国時の隔離期間の撤廃とワクチン接種証明のデジタル化による空港到着時の検疫の簡素化を求めました。
③ 諸外国の入国検疫は大幅に緩和している
一方、上述の通り、日本政府は海外から入国するする者に対してワクチンパスポート(新型コロナワクチン接種証明書)を求めていませんが、これは現在、日本人旅行者の海外への渡航時に必要な公式書類となっていることから、日本政府は必要とする日本人に対してワクチンパスポートを発給していますので、ワクチンパスポートは日本でもよく知られています。このワクチンパスポートは11月9日現在、66カ国への渡航に必須ないしは有効です。
現在、ほとんどの先進国が、各国が容認しているワクチンパスポートにより海外からの入国後の隔離を免除し、入国時の検疫を緩和する有力な手段としています。
その理由は、前のレポートに見られるように、世界的に新規感染者数が徐々に減り始め、ワクチン接種も進み、治療薬も出始めてきたという現状から、COV-19感染の広がりが落ち着いてきた一方、国内経済を支える航空業界やホテル・観光業界において、とりわけ海外旅行、海外観光客に依存するところは2年間も売り上げを失い、大企業のみならずサプライチェーンの中にいる中小企業も含めて、日本でもそうであるように世界中でこの業界が崩壊に近い状態にあるわけですから、もはや産業を立て直すのに時間的な余裕はないということのようです。
因みに、米国では11月8日からワクチン接種済みの人に対して隔離なしでの入国を解禁し、日本人のハワイ旅行者にも朗報でした。EUやイギリス、スイスなどでは国ごとに多少の制度の違いはあるものの、ワクチンパスポートを入国者の検疫待機を免除するためのツールとしています。また、東アジアや東南アジアの国々でも、タイで11月1日から日本を含め48カ国からの旅行者に対して隔離なしで受け入れを始めたのを筆頭に、シンガポールでもワクチン接種者を対象とした隔離なしの入国の枠組みをオーストラリア他の特定対象国対象に開始するなど、徐々に緩和が始まっています。日本ではまだワクチンパスポートを利用した隔離なし入国の話は出ていませんが、諸外国の新しい動きに加えて、10月31日には衆議院選挙が終わり、cov-19関連の制度の見直しが進めやすい環境が整いましたので、そろそろワクチンパスポートを利用する環境が整ったのではないかと思われます。
④ 諸外国の航空会社の国際線路線が本格的に復活か?
諸外国の入国検疫の大幅な緩和と軌を一にして、米国と欧州間の路線再開が続くなど、多くの航空会社が長距離路線を含めて大幅な増便を始めようとしています。日本の場合は隔離なし入国は未定の段階にあり、需要増の見通しが不透明ではあるのですが、日本の航空会社のみならず、米国路線はハワイアン航空のホノルル線、ユナイテッド航空のシカゴ、ヒューストン線を、欧州路線は各社のパリ、フランクフルト、ミュンヘン、アムステルダム、ヘルシンキ、チューリッヒ行の中長距離路線で増便が行われる予定となっています。
(注)海外旅行にお出かけの際の訪問国の入国条件については外務省のホームページなどで個別の確認をお願いします。